「 おかえり! 」


 「コムイさん!」「!リナリィィィィ!会いたかったよー!」「室長」あのあとも、バク支部長に泣き叫ばれたり、逃走しようとしたクロス元帥を見事、リナリーの愛らしさで引き止められたりいろいろあったが、みんなとの挨拶も手短に、アレンたちはようやく司令官のもとへ ――― 教団本部への帰還が叶った。


「 みんなボロボロね 」
「 でもなんか、すごい達成感。たいへんだったけど、何よりこうしてみんなで帰ってこれたことが嬉しい 」
「 ー!やっぱは教団の天使だあああああああああ 」
「 それセクハラですよ、ラビ。それを言うならリナリーも貴重な教団の花です 」
「 アレンくん。気を遣わなくていいのに 」
「 さ、まだまだじゃれあいたいところだけどわたしたちは医務室に行かなくちゃ 」
「 俺はの妙な技で間に合う・・・・・ 」
「 ユーくん。ボロボロなのはも同じなんだよ 」


 あちこち擦り傷だらけのをみるなり、神田は少しだけバツの悪そうに舌打ちをし、わしゃわしゃとの頭を半ば手荒く撫でた。「医務室もだけど、わたしお風呂入ってごはんにしたい」「欲望に忠実なのもどうなんですか。まあご飯を食べたいのは同感ですが」「いまなら食堂も手薄だろうし!みんな先に医務室に行ってて!落ち着いたらわたしも手当してもらいにいくから!」「そうね、寄生型はまずご飯をたくさん食べなくちゃね。婦長さんには言っておくから」ミランダの申し出をありがたく受け取り、とアレンは一目散に食堂へ駆け込んだ。


「「 ジェリーさあああああああああああああああん!お腹すきましたああああああああああああ! 」」
「 おかえりいいいいいいいいいい!待ってたわよ、ふたりともー!好きなだけ食べてちょうだい! 」
「「 っ、いただきます!! 」」


思い思いにメニュ−を選び、とアレンは顔を見合わせて微笑むなり両手をあわせた。どれほどこの瞬間を待ちわびたことかわからない。箱舟戦闘中も軽食程度につまんではいたが、寄生型であるアレンとの“帰ったらすぐにやりたいこと”は一致していた。お風呂よりもなによりも、食事をしたかったのだ。できれば、アレンといっしょに。


「 ? どうしました 」
「 ううん!こうしていっしょにご飯が食べられて、嬉しいなって!アレンくんとは、巻き戻しの街以来だったから 」
「 そういえば、そうでしたね。いろいろ心配をかけて、すみません 」
「 ううん。アレンくんならだいじょうぶって、みんな信じてたよ。もちろん、わたしも 」
「  」
「 さ、食べよう食べよう!そしたら医務室に行かなくちゃ! 」


 の力強い言葉に、まぶしい笑顔に、ああほんとうに帰ってきたんだなと実感がわいてきて、とうとう緊張の糸が切れた。「僕も」「ん?」「僕もあいたかったです、に」「アレンくん」「信じていて良かった。こうしてやみんなに会えて。ほんとうは何度もくじけそうになったことがあったんです。でも」「おかえりなさい。がんばったね」優しい笑顔に、また目頭が熱くなる。心が、震える。安堵からくるものとは違う、もっと別の ――― 。


「 遅かったな、 」
「 ラビ 」
「 さあさっちゃんも私用が落ち着いたら治療するわよっ 」
「 婦長さん・・・大袈裟です・・・ 」
「 あれ?アレンは? 」
「 さっきまでいっしょだったんだけど・・・何も言わずにいっちゃったから、多分箱舟かな・・・? 」
「 んまー!まだ安静にしてないといけないのにっ。ここの人間はほんとうにっ 」


 仕事人間ばかりで困るわ!と怒鳴りながらも手際よく手当をしてくれている婦長に感謝しつつ、とラビは顔を見合わせて微笑んだ。けれど、は気づいていた。ラビの、自分の ――― 笑顔の端にある、影に。“黒くくすんだ大きな力”が近くまで来ている、そんな気配に。