「 ヴェント・ディヴィ−ノ! 」


 「!マリ!」「ブックマン、」「上じゃ!!」「!!」巨人型アクマが地面を蹴って舞い上がったと思った刹那、地面に穴が開くほどの衝撃波が放たれた。間髪を入れずに、マリの弦がアクマを拘束する。「っはぁ、はぁ、、無事か」「ヴェント・ディヴィ−ノ!」呼吸を整えながら、マリがを振り返るのとほとんど同時に、の大きな声が空気を振動させた。


「 ―― 怒って、る? 」
「 キレたをみるのは久しぶりだなぁ 」
「 元帥・・・のんきですね・・・・ 」
「 それほども焦っているってことでしょ。
  数時間かけて、ようやくアクマもここまで減らしたが・・・・アレンたちへの気がかりがぬぐえたわけじゃないからね 」


 攻撃の手を緩めることなく、ティエドール元帥はいつものように眼鏡を押し上げながら、口の端に笑みを浮かべる。「ブックマン!」「ミランダ?どうし、」「あれ、は」「黒い、箱舟だと・・・・?」「あそこをみて!」ミランダ、ブックマン、ティエドール元帥に習って、空を仰ぐ。頭上はいまだに暗い闇を落としたままで物事の判別は難しいが、もすぐに異変に気が付いた。


「 どういう、こと?白い部分が消えて・・・ 」
「 ブックマン、あのなかには神田たちがいるんじゃないのか?! 」
「 どんどん崩れていく・・・!みんなはどうなるの!? 」
「 ミランダさん・・・・ 」
〈 伯爵の目的はこれだったのか! ―――ラビ! 〉


 「そんな・・・」「ミランダさん」「そんなのいやよぉ!」ミランダの肩を抱き、消えていく箱舟と新しく出現した黒い箱舟をみつめる。その瞳はかすかに揺らいでいる程度で、数時間前と同じ輝きは失われていなかった。「だいじょうぶ!」「、ちゃん?」「アレンくんたちは、ぜったい、だいじょうぶ!」「そうじゃな。イノセンスを持たないリナリ−やほかの連中はともかく」「ああ、あのなかにはアレンがいる」「ブックマン」「?」「長い夜が・・・やっと、終わりそうだよ。もうすこし、踏ん張ろう」「ああ」ブックマンが頷く。は予感がしていた。もうすぐみんなに会える。この悪夢のような夜は、きっともうすぐ終わる。


「 ちゃんは、ほんとうに強いのね 」
「 え? 」
「 アレン君と同じ。寄生型のひとってみんな“そう”なのかしら 」
「 寄生型とか、装備型とか、そういうのは関係ないよ。ただ、信じたいだけ 」
「 ちゃん 」
「 未来を。みんなといっしょにいられる、未来を 」


 が微笑んだ刹那 ――― まばゆい光が頭上を照らしていった。そして現れたのは ――― 。「お〜い、みんな無事さ〜?」「ラビ!?」「生きてる!消えていた時間が戻ってくるわ!ちゃんの言ったとおりね!」「「神田あああああああああああ!生きてたああああああああああっ」」「うるせぇマリ!ちび!」「聞こえましたか元帥!」「わたしの新しい弟子になる子も無事かどうか聞いてくれ・・・・」「ラビー!神田―!」「わぷっ、!急に飛びつくなって!」「その割には鼻の下伸びまくってますよ、ラビ」「アレンくん〜っ、無事で良かったー!」「はい。ただいま、」「ただいま、」「みんな!おかえりなさいっ」の満面の笑みと、元気の良い抱擁を受け、長い夜はようやく終わった。純白の羽根が、夜空に舞い上がって円を描く。いつの間にかアクマのノイズも消え、静寂を取り戻した。空は、白み始めていた。