「あっ神田めっけ!」500メートル上空から見覚えのある黒髪を見つけ、イノセンスを解く。「神田!マリ!デイシャッ!久しぶり−ッ!」ドシャ。そんな鈍い音がしたことに気いてか気づかずしてか、陽気な声色で、いつもの笑みで久しぶりにみる仲間たちを確かめるように見つめる。 「 よ、よう!相変わらず元気そうジャン… 」 「 久しぶりだな…。結界を発動したほうが良いんじゃないのか… 」 「 へ? 」 「 く−そ−ち−び−! テメェ!きょうというきょうはぶった斬る! 」 「 わあごめんなさいごめんなさい!そんな怒るなんて思ってもみなくて!げ、元気そうだねっ 」 「 邪魔すんならテメェから片づけてやるから覚悟してろ 」 「 素直じゃないなー神田は。あんな言いぐさだが、ほんとうは嬉しいんだ、神田も 」 「 少なくとも、俺たちは嬉しいぜ!なっマリ! 」 「 …ああ、もちろんだ 」 「 マリッ!デイシャッ!ありがとうッ 」 ガバッ。そんな効果音とともに、すこし前方を歩いていた神田のこめかみあたりから、ビキッという神経のキレる音を聞いた人間がいるとか、いないとか。乱闘という名の無駄な体力の消耗をしたあと、は道すがら前回の任務のことを仲間たちに話した。 「 ふうん、お前ンとこにもノアがね 」 「 そうなの。だからすこしでも早くみんなと合流したかったんだけど 」 「 お忙しい科学班班長サマに捕まっちまったわけだ 」 「 えへへ。でも新人さんにも会えたし、良かったよ 」 「 ああ不思議な力を使う…ミランダ・ロット−とかいう? 」 「 そうそう。リ−バ−さんにちょっと教えてもらったんだけどね。タイムコ−ドっていうらしいの 」 「 ヘェ、おもしろそうジャン。なァ神田 」 「 …ちっ 」 「 神田、どうし…AKUMAのノイズ音? 」 「 厄介なところに入っちまったみたいだぜ 」 言うなり、自らの装備型イノセンスである六幻を引き抜く神田。やほかのふたりの仲間たちも、イノセンスを発動する。霧の最中、異様な空気が立ちこめていた。濃い霧と、鼻を指す異臭。そして、無数のAKUMAの気配 ――――――― AKUMAの、密漁区。 「 またたくさん…ひとが死んだんだね。誰にも知らされずに 」 「 ――――― 」 「 許さない…伯爵…ッ 」 「 バカ!迂闊につっこむなっ 」 「 援護する、行ってやれ神田 」 「 雑魚は片しとく。が我を忘れると無意識に突っ込んじまうのはオレらがよく知ってんじゃん? 」 ふ、とデイシャに鼻先で笑われてしまい、もうなにも言い返せない神田は、またひとつ人知れず舌打ちをすると、目の前のAKUMAを破壊するなり、を探した。「クソッあのどちび!」「神田!後ろっ」「うるせえっ分かってる!」ザン!気持ち良いほどすがすがしく、神田の六幻がAKUMAを破壊していく。 「ちっ面倒くせえ」「わたしなら大丈夫だから!行ってあげて!あれじゃあ多勢に無勢だよっ」「言われるまでもねェよ。ヘマしたらぶった斬る」「はは・・・どっちにしたって斬られるんじゃない」地面を蹴ってあっと言う間に姿を消した神田の背を見送り、はチャペルの頂にある鐘の下に立った。 「 イノセンス第一段階 ――――――― 開放! 」 < コソコソ隠れたって無駄無駄! > 「 まったく、いちいちデカイAKUMAだなあっ 」 < やたら独り言が多いエクソシストだなあv > 「 ―――――― 哀れなAKUMAよ、安らかにおやすみなさい 」 ――――――ドオオオオオオン! あちこちで残響する爆発音。仲間たちが戦っているのだとわかる。ある程度周囲のAKUMAを破壊したはひとつ、イノセンスでもAKUMAでもないモノの気配を察知した。人間?それとも、ノア? 「デイシャ!?」「くるんじゃねェ、…ッノア、だ!」「ティキ、ミック郷…」「これはこれは噂の天使サマ。この間はウチの家のモンが世話になったな」「こちらこそ」ス、とデイシャの前にたち、戦闘態勢に入る。「へへ、実はが落としてった羽根をずっと持ってたんだ。お守り代わりにな」「デイシャ」「あいつの能力、知ってっか」青ざめた表情のデイシャに、コクンとうなずく。「勝負よ、ティキ・ミック郷」「その強気が吉と出るか凶と出るか。見届けさせてもらうよ、天使サマ」ノアのひとり、ティキ・ミック郷が不適に笑う。夜更けはまだ、訪れてはくれない。 【 20101025 * 加筆修正 】 |