「 キリト!会いたかった−! 」 「 うおっ? 」 ドンガラガッシャン。そんなど派手な効果音が、キリトのうららかな午後の静寂を絶った。「っ−」「わっごっごめんキリト!大丈夫?」あたりどころが悪かったのか、起きあがる気配がない。しかし次の瞬間――――。「このっ」ガバッ。ドサッ。いつもの仕返しだとばかりに、瞬時に体勢を立て直し、持ち前の身体能力を発動したかと思えば、この体勢。キリトこそ、してやったりな顔をしているが――――この体勢は、どうみても。 「 セクハラ−っ!!!! 」 「 えっ?あっいやこれはその!誤解だ! 」 「 問答無用! 」 バチ−ン!犯罪防止コ−ド発動とともに、キリトが盛大な平手打ちを食らったのは、いうまでもない。 76層、エギルの店 ―――― そこに、エギル、クライン、そしてキリトの婚約者アスナと、彼を囲う女性プレイヤ−たちが集った。なんとも異様な光景である。 「 え−っとはじめまして。キリトのリアルのフレ、です 」 「 たくっ最初はとうとうSAOに変質者でも現れたのかと思ったぞ 」 「 うっごめんなさい……… 」 「 え−と、はじめましてさん。わたしはキリトの婚約者のアスナです 」 「 アスナ、婚約者強調しすぎだから 」 「 えっ?あっごめん。どういうことか説明してくれる? 」 「 もちろんです。わたし、自分で言っちゃなんだけど、こうみえても結構プロのハッカ−だったりするんですが 」 「 みんなの言いたいことはよくわかる。まあ聞け 」 一瞬キリトの顔が青ざめた気がしたが、おもしろいから放っておくことにする。「実はPCマニアのお母さんとも仲良くて」「ああ、話がみえたわ。なかなか目覚めないキリトを心配して、探しに行くように頼まれたってところかしら」「もちろん、妹のリ−ファちゃんもいっしょにね」「なるほどな。しかもは相当なゲ−マ−だ。戦力になるのは間違いない」「へぇ−それは初耳かも!なるほどね−さんの腕を見込んでってことなのかあ」妹のリ−ファも納得した様子で、その日はとりあえず各解散となった。 「 ふう。通信とモニタリング機能しか持ち込めなかったわ。でも、これだけ材料と情報があれば 」 「 ?いるか? 」 「 わっキリト?どうしたのこんな時間に 」 ノックされ、あわててパレットを閉じてキリトを招き入れる。「どうぞ−」「サンキュ。あのさ、母さんほかになにか言ってなかったか」「ふふ。心配なら連絡取る?」「そんなことできるのか?外部との接触は」「できるようにするために、あたしはここに来たの。もちろん、ふたりの手助けをするっていうのは嘘じゃないよ」「……やっぱりオレの考えは間違ってなかったか」「うん?」は首をかしげつつ、作業をすすめる。盛大なため息が聞こえたのかと思うと、突然体中が暑くなった。婚約者がいながら、なにしてんだコイツ?! 「 ちょっキリト? 」 「 その様子じゃ、相当心配してきてくれたんだろ。なのに……疑って悪かったな 」 「 無理ないよ。システムエラ−でなにが起こるかわからないんだもん当然だよ 」 「 そっか。相変わらずだなは 」 「 キリトもね。システムコンソ−ルみつけたんだって? 」 「 どうしてそれを 」 「 ユイちゃんに聞いたの。うまくすれば、もっといろいろなことができるようになるかも 」 「 ユイの権限を戻すことも? 」 「 やってみるつもり。いろいろ通信機能持ち込んだから 」 「 助かる。なにか手伝えることがあればなんでも言ってくれ 」 「 ありがとう。ん−!きょうはもう疲れたから休むわ。キリトは?攻略、忙しいでしょ 」 「 そう、だな 」 「 そんな顔しないの。パレットみてごらんなさい 」 「 ? あたらしいアイテム? 」 「 録音水晶みたいに、アイテム化してみたの。これならバレないでしょ 」 「 ああ、助かるよ。ただ 」 「わかってるわ。権限コ−ドには気をつけろって言いたいんでしょ。それも、全部ユイちゃんに引き継げるようになったら、問題なくなるでしょうけど」「それはすごいな。だがそうなると途方もなく時間がかかるんじゃないのか」「かまわないわよ。そのために入院もしたし、準備も整えてある。あんたは気にせず、攻略のことだけ考えてなさい」まっすぐキリトを見据えてそう話すの目は、自信と決意に満ちていた。 「 クリアしたら、強制ログアウト出きるように手配するわ 」 「 ありがとうな。向こうのこともいろいろ聞けて、ほんとうに助かったよ 」 「 どういたしまして。キリトとリアルでも会う約束したばっかなのにさあ。戻ってこないなんて心配じゃん 」 「 そういえばしたな、そんな約束 」 「 だから!なにがなんでもあたしはあんたを向こうの世界に帰すわ! 」 「 」 「なに?」「君がオレを守ってくれるように、オレも君を守るよ。約束する」「ホント、恥ずかしいせりふ平気で言えるわよねあんた。アスナがかわいそう」「えっ?ああ、よく言われる」「でしょうね」笑いあったのもつかの間、安心したのかキリトはようやく腰をあげて、背中を向けた。けれども、今度はがキリトの手首をつかんで、引き留めた。「?まだなにかあるのか?」「え−えっと、あのっ……これはお礼!お礼だからね!」「は?」キリトが首を傾げたのもつかの間――――ちゅ、という可愛らしいリップ音が聞こえ、今度こそ本気で動揺したらしいキリトは、思わず目を見開いた。 「 なんて顔してるの。アメリカじゃ挨拶みたいなもんでしょ。しかも、アスナとは一回や二回じゃないだろうし? 」 「 だっだからって不意打ちはだめだろ!?! 」 「 キリトって意外と女々しいのね 」 「 う−っもう寝るからな!おやすみっ 」 「 ふふっはいはい、おやすみキリト 」 大きく息を吐いた後、はパレットを閉じてベッドに倒れ込んだ。「なにしてんだ、あたし」耳まで火照った顔を覆うようにしながら、しばらく自己嫌悪に陥るだった。「和人のバカっ」 心臓が教えてくれた、 |