合唱コンク−ル、夏季大会。彼女 ―― の活躍もあって、並盛中学は準優勝を収め、そして、決勝。 さすがに決勝ともなると、全校規模での応援もあるわけで、そこにはもちろん彼女の友人だけじゃなく、山本武も来ていた。 応援は強制というわけではなかったため、全校生徒あわせて半分ほどが会場となるホ−ルに集まっていた。 「の歌、こういうところで聞くのは初めてだな」 「うん、俺も」 「わたしもそうだよ!ハルちゃんもだよね」 「はい、そうですね!」 「ってなんでハルまで!?今日学校は?」 「創立記念とかで休みなんです! で、京子ちゃんにさんの歌いっしょに聞きませんかって言われて」 ニコニコと嬉しそうに話す三浦ハルに、綱吉はそうなんだ、とため息を吐く。その隣で山本は何を期待してたんだ、と苦笑いを浮かべる。 獄寺はというと用事があるとかで来られないらしく、本人もとても残念そうにしていたのを思い出した。 「そういえば山本、部活は?」 「ん?俺は午後からなんだよな!だから余裕余裕」 「そっか、今日は日曜日だもんね」 不意に尋ねられ、そういうこと、と返事を返した山本は視線を再びステ−ジ上へ向ける。コ−ラスが歌い終わり、続いてのソロが始まる。 その合間にデュエットが歌われることになっているらしいが、どのあたりで歌われるかまでは分からなかった。 「あ、さんです!」 「ほんとうだ。すごく綺麗な歌声だね〜ね、ツナ君」 「え?う、うん・・・そうだね。山本・・・?」 話をふられた綱吉はしどろもどろになりながらもそう答え、話しかけようと山本を振り返った。彼の表情は真剣そのもので、話しかけられる雰囲気ではなさそうだ。 「(山本・・・真剣だなぁ・・・)」 「どうした?ツナ」 「へ・・・え?」 見られていることに気づいたのだろうか。そんなことを尋ねられ、綱吉は思わず首をかしげた。 「ううん、別に。上手だよな、」 「・・・ああ、ほんとうにな」 「山本・・・何かあった?」 「俺・・・やっと分かった気がするよ。なんでに会ってまでお礼言いたいと思ったのか」 守りたいと思ったからだ。の歌声を ―― の思いを、笑顔を。あのとき指摘されて、やっと分かった。好きだから、大切だから、守りたい。 そんなふうに思うから、いっしょにいたい。これからも、ずっと。 「俺・・・馬鹿だな・・・言いたいことさっさと言っちまえば良かったのに」 「山本・・・」 「なぁツナ。俺、にありがとうって伝えたいんだ。何か良い方法ないか?」 「え・・・?直接本人に言うんじゃ駄目なの?」 「駄目じゃないけど・・・は・・・あいつは、歌で俺に力をくれたんだ。 だから・・・なんかこう、そういう見せられるもので返したいんだけど・・・」 「う〜ん・・・じゃあ山本のホ−ムランボ−ルプレゼントしたら?」 「・・・なかなか難しいなぁ。けど、頑張ってみるか・・・」 「うん、がんばって!きっと伝わるよ」 「サンキュ、ツナ」 山本がにか、と笑みを浮かべる。その笑みはいまステ−ジで歌っていると同じくらい眩しくて、綱吉は思わず目を眇めた。 もう一度ステ−ジを向いたとき、の歌は終わっていて、彼女の静かな一礼とともに会場いっぱいに拍手が沸き起こった。 それはまるで、ふたりの物語の、クライマックスを意味しているかのようだった。 山本 きみが好きだと気づいた日 070829 |