夏の強い紫外線はお嬢様の白くて柔らかなウェッジウッドの陶器のような肌をすもものような紅に染め上げた。これはこれでかわいらしいけれど、ひりひりと痛むということなら可哀相なことこの上ない。お嬢様は肌が弱いので炎症を起こしてしまわれたのだろう。出来ることなら俺が変わって差し上げたい。痛みも熱も俺に移ってしまえば良いのに。去年と同じ日焼け止めを使ったはずだけど紫外線が強くなったか、お嬢様の肌が敏感になったか、まあそんなことどーでもいいけど太陽は容赦してくんなかったらしい。俺が野球少年って呼ばれてた頃もさんざん苦しめられた。どうやら太陽は鬼畜である。あとでシャマルに新しく調合してもらおう。 「なかなかおさまりませんね」 節目がちに笑ってよこされると、胸が締め付けられるようだった。お嬢様は、様…つまり俺の雇い主でありお嬢様のお父様である方が愛娘へのプレゼントに、と贈られたアンティーク調のソファに小さなその身を沈めてバルコニーから入るそよ風に当たられている。白いレースのカーテンが貴婦人のパニエのようにゆらめいた。 あついな、と呟いたお嬢様に心臓が止まりそうなくらい惹きつけられる。俺はシニカルなガラの悪い笑顔で「私の言う通りにしないからです」と得意げに言った。あんなにしっかり日焼け対策をするように、言ったのにな。そこらの貴族のご令嬢のように女々しくなく、何事も楽しまれるとっても明るいお嬢様だから、小さい頃から日焼けも特に恐れないようだ。いいところでもある。俺はお嬢様のそんなところが狂おしいほどいとおしい。可愛いと思う。でも、お嬢様の珠のような肌をお守りするのも俺の仕事のひとつだ。(お嬢様の指先、髪一本、傷つけるようなことがあってはならない。)様の命令でも何でもない。俺がお嬢様に初めてお目にかかったときに心に誓ったことだ。ひと目で永遠の恋に落ちた。 「俺がお嬢様の腕や、脚や、」 「ひゃ」 言うところに触れると、俺の手とご自分の体温の温度差に驚かれたのだろう。息を呑むようなきれいな声で小さく悲鳴をあげた。やっぱ、俺の心臓はもたないかもしれない。吸い付くような肌に衝動を覚えた。 首に触れると大きく身体がゆれた。冷たかったのだろうか。いい。冷めればいい。太陽が与えた熱なんて全部消えて、全部俺によって起こる熱に変わればいい。 「山本…」 「…耳も」 「ふ、あ…いたっ」 「あ、耳って案外盲点なんすよねー。しっかり塗れてなかったんじゃないですか?真っ赤」 ほら、と我ながら意地の悪い笑い方。お嬢様の耳を軽く唇ではさんで、ずっと考えていた。このまま全部吸い取ってしまって全て痛みも熱さも共有してふたりだけで太陽からみつからないところまで逃げられたら、いいのに。 「俺が、何にも染まらせない」 独占欲をもった執事は身を滅ぼすのかもしれねーな。 光はジャメヴ |