すこし前から「と遊びたい!」とせがんでいたフェリシア−ノを、どうしたものかと公務に追われるが悩んでいたところ、ふとひとつ空いている予定に目を落とし、そうだと表情を輝かせた。そうして受話器を手に取り「フェリシア−ノさん、この間の件なんですがあしたなら少し時間がとれそうなので良かったら遊びに来ませんか?」とこっそり彼を誘ってみた。するとフェリシア−ノは心底嬉しそうな声で「やった−!必ず行くよ!あしたねっ!」と意気揚々に受話器を切った。 「 ふふ…ほんとうに嬉しそうでしたね−、フェリシア−ノさん 」 ちょうどいまはひまわりも見ごろを迎えていることだし、ひまわり畑にも案内してみよう。フェリシア−ノの喜ぶ表情を思い浮かべながら仕事をすると、なんだかいつもよりはかどっているような気がするのだから不思議だった。そして、翌日 ――――― 晴れ渡った空を仰いでフェリシア−ノを出迎えるため空港にいると、「ヴェ〜〜」といきなり強烈なハグで逆に迎えられてしまった。 「 わあっフェリシア−ノさん!!お、お久しぶり、です… 」 「 うんっ!久しぶり〜僕ずっと会いたかったんだよ〜 」 「 そうです、か…あの…流石に苦しい、です 」 「 えっ?ああごめん!あんまり嬉しくって、つい!大丈夫? 」 「 ははは…大丈夫ですよ。それより案内したいところがたくさんあるんです!行きましょう 」 「 嬉しそうだね〜 」 「 はい!だってフェリシア−ノさんをわたしの家に呼ぶのははじめてじゃないですか! 」 「 ああなるほど−、言われてみればそうだね!う〜ん、なんだか緊張して来ちゃったよ 」 「大丈夫ですよ−雰囲気的にはフェリシア−ノさんのお家とそんなに変わらないはずですし」「なにそれ−僕の家が田舎ってこと−?」「ちっ違いますよ!こう、落ち着くと言いますか!」「あはは−必死なも可愛いなあ〜」「も−フェリシア−ノさん!からかうならもう案内しませんよっ」そう言って膨れるをどことなく微笑ましく見つめながら、フェリシア−ノは「ごめんごめん、冗談だって−。お願いします!」と言ってぱんと手を合わせた。その様子がなんとも可愛らしくて、は「分かっていますよ、ほんとうにフェリシア−ノさんは楽しいですね−」とくすくすと笑いながらそう言った。 「 ヴェ−、結構見て回ったけどってほんっとうに花が好きなんだね− 」 「 ええ。そうは言いましてもこれ、ほとんど国民のみなさんが自分の手でお手入れされてるんですよ 」 「 え−すごい!だからも花がすきになったの−? 」 「 そうですね。お花に囲まれた生活をしていると、自然に 」 「 でもそっか−にはお花が似合うから良いよね− 」 「 え?そ、そうですか? 」 「 うん!なんていうかそのものがお花〜って感じ! 」 「 そう言っていただけると嬉しいです、フェリシア−ノさん。ありがとうございます 」 「 えへへ−。あっもうお昼か−、きょうのお礼に僕パスタをご馳走するよ! 」 「 ええ!お客人にそんなことさせられませんよっ 」 「 だって、僕の家にもそんなに遊びに来られないでしょ−?ア−サ−の家は違うみたいだけど 」 「 まあ、幼馴染ですからね 」 「 む−。とにかくは気にしなくて良いよ!台所借りるね− 」 「??フェリシア−ノさん、突然どうしたんでしょう…?」台所に向かうフェリシア−ノの背中をなんとなく見つめていると、そう言えばエプロン姿の彼を見るのも新鮮だなあと自然と表情が緩む。「可愛いなあフェリシア−ノさん」ニコニコとその後ろ姿を見ているとフェリシア−ノの「出来たよ−ってあれ?どうしたの?そんなに笑って」と言う声が頭上から聞こえて、は「なんでもありません、フェリシア−ノさんのところのパスタは有名ですからね!楽しみだったんです」と言ってごまかした。「ふうん?まあ良いや、冷めないうちに食べよう食べよう」「そうですね!いただきますっ」そう言って手を合わせ、フォ−クにパスタを絡める。 「 どう?おいしい? 」 「 はいっとってもおいしいですフェリシア−ノさん! 」 「 良かった−!に喜んでもらえて。お腹すいた−っいただきます! 」 「 あっそうです、折角ですから我が家で出来た紅茶でも飲みません? 」 「 えっの家の?飲みたい飲みたい! 」 「 えへへ−驚かないでくださいね。その名もフロ−ラルティ−なんです! あっでもだからと言ってそんなにキツイにおいはしないんですよ−、ちゃんと優しい香りのものを選んでいるので 」 よほど嬉しいのだろう、は嬉しいことがあると早口になる癖があるとア−サ−に聞いたことがあった。の家にはお花しか自慢出来るものがないから、自分の家のものをすすめることが嬉しくて仕方ないんだろうとフェリシア−ノは考えた。「そんなも可愛いんだけどね−」「はい?フェリシア−ノさん何か言いました?」「うん?は可愛いなあって!」「そっ、そんなことないですよ!フェリシア−ノさんのほうがぜんぜん可愛いです」「え−」「なんですか、え−って…」フェリシア−ノの返答に、眉間にしわを寄せる。ティ−カップをふたつ、食卓に並べるとは「どうぞどうぞ」と言ってとても嬉しそうに笑みを浮かべる(さっきまでの怪訝そうな顔はどこへ行ったんだろう?)。 「 うん、おいしい!これいけるよ!洋食なら愛称抜群だね− 」 「 ほんとうですかフェリシア−ノさん!気にいっていただけて良かったです! 」 「 うんうん!きっと売れると思うよ!僕、ル−トにお土産これにする! 」 「 分かりました。それでは用意しておきますね− 」 「 うんっ。ねえねえ、このあとはどこにいくの? 」 「 ふふふ、それは来てからのお楽しみです!きっと吃驚しますよ− 」 「楽しみだなあ」フェリシア−ノの言葉を耳に傾けながら、あの花畑に行くのも久しぶりだなあなんて昔に思いをはせつつ、とフェリシア−ノは昼食の席を立って屋敷を出た。そうしてフェリシア−ノがに引かれて案内された場所は、夏の花が咲き乱れるひまわり畑だった。「うわあすごいすごい!こんなに沢山のひまわり見たことないや」「どうですか?これまで見てきたものとは違いますでしょ」「うん!これもみんながつくったの?」「ええ、この土地はもともと荒れ地だったんですがみなさんここを耕して季節の花を植えようってことになったんです」「へえ、すごいなあ−。ねえ、」しばらく感動していたらしいフェリシア−ノが不意に振り返り、ほんのちょっと生真面目そうな表情をみせた。はじめてみるフェリシア−ノの表情に、一瞬ドキリと胸が高鳴った。 「 なんですか…?フェリシア−ノ、さん 」 「 さっきの話に戻るんだけど 」 「 さっきの? 」 「 うん。、僕のほうがぜんぜん可愛いって言ったでしょ−? 」 「 そのお話ですか。はい、言いましたね 」 「 でもね−。僕だって、男なんだよ−? 」 「 え?そうです、ね。もしかして、それで怒っていらしたんですか? 」 「 さっすが!やっぱり察しが良いね−そのとおりだよ!まあいまはそうでもないんだけどね 」 いまはそれほど怒っていないと言ったフェリシア−ノの言葉にホッと安堵しつつ、は「折角楽しみに来てくださったのに…気分を壊してしまってすみません…」と言ってしゅんと肩を落とした。「大丈夫だよ!ごめんごめん、ちょっと遊びすぎちゃったかな−反省」「え…?」「やっぱり、はだね−安心したっ」「フェリシア−ノ、さん…?」ことんと首をかしげるの手に、フェリシア−ノはそっと触れるだけのキスをした。「今回はこれで許してあげるよ−」「な!フェリシア−ノさんっ」「なに?」「なにじゃありません!手にキ、キスをするのはわたしの家では恋人同士がするものなんですよっ」「そうなの?知らなかった、僕」「も−っフェリシア−ノさんっ!」「わ−っが怒ったあ!でもこれでおあいこだよ−−」「分かってますっ」から逃げようとひまわり畑を走り回るフェリシア−ノの背中に、幼いあの日の幻想を見たような気がした。「ア−サ−さん…」 光輝く庭で見たファントム |