「 相変わらず真面目だなぁ、は 」 「 わ!吃驚した!なんだ、キラか。委員会、終わったの? 」 「 うん、いまね。それよりこれ、アスランに? 」 「 そう!もうすぐ誕生日だからね! 」 満面の笑顔で言われなくても、それくらいわかってるよ、と人知れず嘆息する。机の上に、無造作にちりばめられたラフの束に、無機質なパーツたち。その笑顔も、目の前で繰り広げられている空間も、すべて自分のためではなく彼のためなのだとなんとなく理解した、あと。じりじりと、また、胸の奥が焼けつくようなあの感覚に襲われた。なんなのだろう、この感じ。いまは夏の暑い時期ではないから、太陽のせいだなんて言い訳は通用しない、きっと。 「 ――― 間に合うの? 」 ため息交じりにカレンダ−をみやる。10月も半ば、アスランの誕生日まで一週間は切っている。そういえば、アスランの家では盛大にパ−ティをするといっていたから、ヤマト夫妻の家、つまりは僕の家では少し早めにするのだと言っていた。その時の光景を思い浮かべたら、自然と表情が緩んだ。 「キラの意地悪!これみてわからない?」ぷう、とようやく自分に向けてくれた表情は、年相応に可愛らしいものだった。 「 学校に持ち込んでまでやってるってことは、ばれてもいいって覚悟なんだよね。 はいはい、今度の土日に間に合うくらいのところまでは、手伝ってあげるよ 」 「 さっすがキラ! 」 「 見返りは大きいからね。覚悟しておいてよ 」 元気よくハグをするに、ほんのすこし目を丸くしながらも、その表情や声音は柔らかい。「折角自分の課題を終わらせたところだったのになぁ」どんどん暗くなっていく外をなんとなく眺めながら、小さくぼやく。ほんとうに、僕はどこまでもに甘い。その理由もいまだにわからないままだけど、こうしていっしょにいる時間は、と僕だけのものだ。そう思うと、暖かい気持ちで満たされていくのを感じた。 「 キラ?なにかいった? 」 「 ううん、暗くなるの早くなったなぁって 」 「 そういえばそうだね。ごめんね、それでなくても帰り遅かったのに 」 「 僕が自分で引き受けるって言ったんだから、はいちいちそんなこと気にしなくていいの!ほら、あと少しなんだろ 」 「 う、うん! 」 コツン、との額を軽く小突く。日はさらに暮れて、の盛大なくしゃみが聞こえたころ――「、だいじょうぶ?」「平気!それよりほらっ」コロンとした小さなハロたちが、あるものは目をぱちぱちさせたり、あるものは耳をぱたぱたさせたり、あるものはスイッチを押すとくるくるまわったり、机の上で忙しなく存在をアピールしていた。「なんだか、」「うん?」「こどもが喜びそうだよねぇ」僕がくつくつとおかしそうに笑っていると、はつい先ほどのように頬を膨らませた。 「 悪かったわね!お子様で!どうせキラやアスランにはかないませんよ−! 」 「 ごめんごめん、そんなつもりじゃ。ほら、ちゃんとまわり見ないと危ない、 」 が拳を振り上げた瞬間、バランスを崩しそうになる彼女の身体を、ぐいっと引き寄せる。不意に近くなるの大きな瞳。「」「な、に」「さっきの、お礼のことだけど」「う、うん」「いまは、これでいいよ」「え?」が言葉を返すより早く、細い身体を抱きしめる。「っキラ、あの、」「ん?」「あの、わたし、」その先を聞きたいような、聞きたくないような気がして、彼女の呼吸を奪う。ひやりと冷たい夜風が、ジリジリ焼き付いていた心臓を覚ましてくれる。 ごめん、アスラン。僕はやっぱり、のことが好きだ。ひとりの、女の子として ――― 神様のいない夜 |