これはきみが出て行って、すこし経ってからのこと。 梅雨入りを控えた、ロ−マ市街での奇怪の調査を終えて、神田や仲間への誕生日プレゼントを買っていこう、とふらりと雑貨ショップやインテリアショップ、洋服店など任務後のオフを満喫していたの目に、見覚えのある白髪と額のしるしが飛び込んできた。「アレンくん!!」「えっ、あ、」彼はちょうど飲食店から出てくるところで、逃すまいと思わず大きな声で呼び止めてしまった。周囲の者だけじゃなく、当の呼び止められた本人も驚いて目を丸くしている。まさかこんなところで遭遇するとは、夢にもおもっていなかったのだろう。そんな心理が、手に取るように伝わった。 「 ――― 」 「 あ、えとあの、その、驚かせてごめんなさい。 まさかこんなところで会えるなんて思ってもみなかったから、つい、 」 対応に困っているのだろう、あたふたしたをみるのは珍しいが、そこもまた素直な彼女らしい、とアレンは表情を和らげた。「僕も、ちょうどにあいたいと思っていたところだったので嬉しいです。やっぱり、神様はちゃんとみていてくれてるんですね」「これって飛びついてもいい流れ?」「ならいつでも受け止める準備は出来ていますが」そわそわと落ち着かない様子のにみかねて、彼女をあわてさせないように、ゆるゆると両手を広げる。「アレンくん!あいたかった−」「はは、僕もです」久しぶりに感じる暖かく優しい居心地に、うっかり涙が出そうになった。 「 ―――で?はなにをしていたんですか? 」 「 み、みんなの誕生日プレゼントを探してたの。もちろん仕事は片づけたよ! 」 「 まだサボってるとか言ってませんよ。なるほど、それですこし路頭に迷った顔をしていたんですか。 らしい 」 立ち話もなんだからと、のプレゼント探しに同行する。すこし離れたところで楽しそうにプレゼントを選びながらプラチナブロンドの長髪を揺らしているの背中をみて、アレンはあることに気が付いた。「誕生日といえば、もうすぐも誕生日ですよね」「え?あ、ああうん!言われてみればそうだね!」「、もしかしてまた?」「なにが?」ラビたちの会話が脳裏によぎったアレンは、仕方ないなあと小さくため息を吐いて、に習うようにあたりを見回す。もちろん、彼女へのプレゼントをみつけるためだ。 「うん、これにしようかな。そろそろお箸擦り切れてて食べにくそうにしてたし」「良い贈り物はみつかりましたか?」「うん!よくみたらここ、輸入雑貨店なんだね。悩まずにすみそう」「それはよかったです。じゃあ、出ますか?」「そう、だね」「?」何かに気が付いた様子のに違和感を覚えながらも、それぞれに会計を済ませて、店を出る。駅に続く川沿いの道を歩きながら、満足そうなと、なんだか落ち着かない様子のアレン。 「 みえた!橋を渡ったら駅だね!アレンくん、きょうはどうもありがとう!また逢えたらいいね! 」 「 え?あ ――― うん。あの、 」 「 なあに? 」 「 左手を出してください 」 「こう?」言われるまま、左手を差し出す。「サイズもあわせずに買ってしまったのですみませんが、急ごしらえですしいまはこれで勘弁してください」「?」そういいながら、すこし控えめに、小指にリングをはめるアレン。「え、あの、こ、これはどうすれば?」「変な虫がつかないように、お守りです。それじゃあ、また」ここはやはり英国紳士らしく、手の甲に触れるだけのキスをして、半ば逃げるように走り去っていくアレンの背中を、呆然と見送ることしか出来ない。「なぜ小指?」鼓動が落ち着いたところでようやく疑問が追いついたが、そんな疑問は汽笛の音とともにあっという間にどこかへ飛んで行ってしまった。そのうち嫌でもリナリ−やミランダあたりに問い詰められるだろうことは想像に難くない。左手小指のリングが、きらりと風に光って、笑っているようにもみえた。 てを、 |