2月になりバレンタインを目前に学校中の男女が浮き足立つ。
誰にあげよう、どんなチョコを作ろうかと悩む女子。
今年こそは欲しいと女子に優しくしてみる男子やそんな周囲を他人事のように眺めている生徒。 手元の雑誌を真剣に見つめる金髪の少女は悩める乙女の一人だ。 昼休み、リナリーたちと昼食を取りながらの話題は自然とバレンタインで盛り上がる。 「リナリーやコレットは誰にあげるの?」 「私は兄さんや神田たちかな。毎年あげてるし」 「私もリナリーと同じかな」 「コレットは焔くんにも、よね?」 あえて口に出さなかった名前が飛び出し箸を持つ手が止まる。 その様子に周りの友人はクスクスと笑う。 どの学校にも人気者と言うのは存在し、この学校にもそういう男子生徒がいる。 1年生のアレン・ウォーカー、3年の神田ユウ、ラビ、凰鳳焔の4人。 それぞれの魅力を持つ彼らにチョコを渡すのも気付いてもらうのも大変なのは昨年一昨年で分かりきっているから余計に迷っているのだ。 2月14日、バレンタイン当日。 登校日でもある今日は朝から学校中騒がしい。 校門には様々な学校の制服の女生徒、教室や下駄箱には今か今かと待つ女生徒で溢れている。 その時、校門に姿を見せた人物に騒がしさは一気に増す。 アレンとラビは笑顔でチョコを受け取り、神田はうざったそうに人ごみを掻き分けている。 3人が通り過ぎた後、焔は一向に登校して来ずチャイムと同時に散っていき、当の焔はホームルームが始まる頃何事もなかったかのように椅子に座っていた。 それから休みの度にアレンたちは女生徒に囲まれ話し掛ける隙は殆どない。 帰り際にラビや神田には渡せたものの、肝心な焔には渡せないまま放課後を向かえてしまった。 「はあ…結局渡せなかったなぁ…」 教室で一人ため息を吐いていると携帯が震えメールがきたことを知らせた。 『まだ学校にいるなら音楽室行ってみな』 誰がいるのかも書かれていないラビからのメール。 しかし、すぐに察したコレットはカバンを手に音楽室に走った。 階段を上りきるとかすかにメロディーが聞こえてくる。 メロディーは音楽室の方向から聞こえ、惹かれるように足を進めた。 閉まりきっていないドアから中をのぞくと窓際の机に夕日に照らされる人影。 曲が終わり弦から手を下ろすと気配に気付いて顔をこちらに向けた。 「コレットちゃん?」 「あ、えっと…」 「まだ残ってたんだ?」 返事に戸惑っている間、ギターをあった場所に戻しながら楽譜をカバンにしまう。 彼がいるのに分かっていたのに上手く言葉が出てこない。 「焔くんも、残ってたんだね…?」 「あぁ…うん、しばらく帰れそうになかったから時間つぶしてた」 苦笑しながら窓の外を見ると人気は大分減っていて漸く下校出来そうだ。 一緒に帰ろうと言いかけてコレットの視線があるものに向いていることに気付く。 視線の先にはチョコレートに付いていたメッセージカードが入った紙袋。 「これメッセージカードの山。物は貰ってもらえて殆どなくなったんだよね」 「そうなんだ…」 「気持ちは嬉しいけど流石に食べきれないし。好きな人からのは別だけど」 あの中に彼の好きな人からのチョコレートが入っているかもしれない。 でも渡すだけなら日頃のお礼とでも言えばごまかせる。 ぐっと拳を握り締めて持っていた紙袋を差し出した。 「良かったら受け取って」 「俺に?嬉しいな、ありがとう」 笑顔で受け取ってもらい、ほっと胸をなで下ろす。 義理だと思われているだろうが受け取ってもらえたのなら―― 「ところでさ…これ義理?」 不意に投げかけられた質問にどきっと心臓が跳ねる。 考えていた理由は飛んでしまって答えられない。 「無言は肯定と取るよ?」 「っ…!義理、じゃない…」 震える声で呟かれた言葉に目を見開くも、次の瞬間にふっと笑みが浮かぶ。 そのまま俯いているコレットに近寄れば、真っ赤な顔が上がって目が合う。 「好きだよ」 「え…」 あまりにもさらりとした告白にどう反応していいか分からない。 言葉につまっていると先程渡したチョコレートを示される。 「ごめんね、意地悪するつもりはなかったんだ。 義理でも貰えたら告白しようって決めてたけどつい気になって…」 「………」 「怒った?」 「怒ってません…だから顔見ない下さいっ!」 無言のままのコレットの表情を窺おうと覗き込もうとしたが、思いきり顔を背けられる。 しかし赤くなった耳で判断するのは容易。 もれる笑みを抑えて後ろから抱き締めた。
大好きだよ、コレット――― 大遅刻ながらもバレンタインでえったん宅のコレットちゃんお借りしてコラボさせて頂きました! 性転換の許可も頂き思いきりいちゃこらさせてみました…! 後半少女漫画みたいで書いてて恥かしがったです(笑) えったん・コレットちゃん色々すみません(土下座) 2011.02.24 |