任務から帰ると食堂が騒がしい。
歩を緩めて眺めればオレンジ色のカボチャやコウモリ型のモチーフが飾られていて、今日がハロウィンだと思い出す。10月も終わりだから最近肌寒かったのか。
そう言えばハロウィンと言えば仮装。リナリーやコレットの姿が見えないのは仮装のためだろうか。 暫し無言で考え再び足早に食堂を通り過ぎる。

「ホー!」
「ウィン!」

向かう途中、こちらに飛んでくる相棒の梟。
その足にはリナリーからのメッセージである部屋に行くよう書かれている。
不振に思いつつも示された部屋に行けば壁に何かの衣装。
試しに着てみるとどうやらバンパイヤらしい。
着替えて待っていると声と同時に扉が開く。

「焔さん着替え終わりました?」
「終わってるよ」

ひょこりと顔を出したのは金髪の少女。
少女に目線を移すと勢いよく立ち上がる。

「コレットちゃん!」
「焔さん?!」
「スッゴい可愛い!」

近付いてそのままぎゅうと抱き締める。
黒い角や羽でコレットがコウモリの仮装をしているのはすぐに分かった。
団服とは違う黒い服はリボンやフリルのついた服はとても可愛らしくコレットによく似合っている。
特に拒否されないのを良いことに堪能しているとネコ耳を付けたリナリーが呆れ顔でこちらを見ていた。

「来ないと思ったらやっぱり焔くんに捕まってたのね」
「リナリーはネコ?可愛い…!」
「ありがとう…じゃなくて!皆食堂で待ってるわよ」
「分かったよ、いこ。コレットちゃん」

漸く体を離して2人の手を引いて食堂に向かう。
食堂には様々な仮装をした団員が既に飲み始めている。
緊張を強いられる日常にこうした息抜きは大切だ。
コレットとリナリーの間に座って早速自分たちも食事を始める。
教団のアイドルと天使で両手に花をしているせいで痛いくらいの視線が集まるがそれも心地良い。







30分程経ち、シャンパンを飲みながら食堂の隅に視線をやるとコムイが難しい顔をしていた。
任務の気配を感じ輪を抜けて横から手元を覗き込む。

「任務だろ?俺が出る」
「パーティーの途中だよ?」
「エクソシストは任務優先だ。着替えたら出るから資料よこせ」

申し訳なさげに差し出された資料を奪い取って着替えた部屋に戻る。
素早く着替えてトランクを手に水路に降りた。

「コレットちゃん?」

探索部隊の隣にはコレットが立っている。
どうしたのかと首を傾げているとぽすりと温かい感触。
抱き付いてきたコレットの頭を撫でる。

「どうしたの?」
「まだパーティーの途中なのに任務に行くって聞いたので…」
「仕方ないよ。なるべく早く帰ってくるから、ね?」

妹か恋人を慰めるように撫でて額にキスを落とす。
とっさに赤くなる様子にクスクスと笑って舟に乗り込む。

「いってきます」
「気を付けていってらっしゃい!」

余裕の笑顔を返して暗い水路を見据える。
次に帰ってコレットがいたら2人でパーティーの続きをしよう。



Happy Halloween!