「けが人は?」「コレット!ちょうど良かった。この子大変なのよ、手当したほうが良いって言ってるのにアクマの群れに突っ込んで行っちゃうんだもん」「大丈夫、みてみる。リナリ−もすこし休んだほうが良いよ」「ありがとう、コレットもね」あきれてため息しか出てこない様子のリナリ−の傍らには、どこか申し訳なさそうにこちらを見据えている不思議な少女。「あの、お名前は…」「レイナ。レイナ・シュバイツア−」「レイナ、さん?はじめまして!わたし、コレット・オマ−レです。同じ教団内にいたのに、ぜんぜん会ったことないなんて…不思議だね」笑みを浮かべながら、スッと両手をかざす。不思議そうに目をぱちくりさせているレイナを見て、くすくすとほほ笑む。


「 大丈夫、治療するだけだから。痛くもなんともないよ? 」
「 ――――― あの、そういうわけではなくて 」
「 ん? 」
「 神田に、不思議な力で傷を癒すエクソシストがいるって聴いたことがあったから…あなたのことだったんですね 」
「 えへへ、うん実はそうなの。最初はみんな吃驚するんだけど、慣れたら違和感とかもなくなるからって 」


”長期安静とかしてなくて良いから、すぐ任務に行かなきゃならない元帥だったりエクソシストさんだったり、そんなひとたちに治療を頼まれることが多いんだ”と言い含めながら、レイナの治療に専念する。「あなたも、いい加減休んだほうが良いのでは…?すごい汗…」「へへっ、大丈夫!ちょっと寝不足なだけなの。レイナちゃんこそ、すっごく危なっかしいよ?」「わたしが、ですか?って…レイナちゃん、って…」「あっ、ごめんなさい!馴れ馴れしかったねっ!シュバイツア−さん、人懐っこくされるの苦手だって神田とかリナリ−とかに聴いたことがあったのに…ごめんなさい」しょんぼりと肩を落として、治療の手を休める。「ええとあの!そんなこと…!」あわあわと、心なしかすこし慌てた様子のレイナを見上げるように見つめて、コレットはひとりふふっと笑みを浮かべた。


「 ありがとう、レイナちゃん。わたしのことは、コレットって呼んでね? 」
「 あ、えと ―――― はい、コレット様 」
「 も−っレイナちゃんっ、早速様付け! 」
「 うっ…コレットさ…ま…、無理です…そんなに睨まないでください… 」
「 ふふっ冗談冗談、レイナちゃん可愛い−。無理は良くないもんね、名前で呼んでくれるだけで嬉しいよっよろしくね! 」
「 コレットさま…ありがとうございます。あと、怪我の治療も 」
「 どういたしまして!わたしの力が誰かの役に立つのなら、エクソシストとして本望だよ!そ・れ・よ・り! 」


ひととおりの治療を終えて、コレットはずいっとレイナを押し倒しそうな勢いで接近しすこしばかり頬を膨らませた。「だめだよ!無暗にアクマの群れに突っ込んじゃ!あと無理な接近戦もだめっ!致命傷を負いかねないんだからね?」「ですが…」「”ですが…”じゃな−い!レイナちゃんの命は、レイナちゃんだけのものじゃないんだから!」「それは…どういう、ことでしょう?」レイナがコトンと、可愛らしくも小首をかしげる。コレットは可愛いなあ、と思いっきりハグしたい気持ちをこらえながら、言葉を続けた。「レイナちゃんがいなくなっちゃったら、それだけでわたしの世界はすっごくすっごく寂しくなっちゃうってことだよ」「はぁ…コレットさまも、リナリ−さんみたいなことを言うんですね」ふふっと、レイナが笑ったような気がした。だから、とても、嬉しくなって。コレットはほとんど無意識のうちに、レイナに抱きついていた。


「 それくらいレイナちゃんのことがだいすきってことだよ!あ−っレイナちゃん可愛い!やっぱりレイナちゃんには笑顔がいちばんだねっ 」
「 やっぱり…? 」
「 うん!レイナちゃんは笑ったら絶対絶対可愛いんだろうなあって思ってたから!予想が当たって良かった− 」
「 コレットさま… 」
「 あとはその”コレットさま”って言うのをやめてくれたら言うことないんだけどなあ… 」


ちらり、と態とレイナの表情を盗み見るような仕草をして、彼女の反応を待ってみる。「そ、それは…」「それが無理だったら、絶対ひとりでアクマの群れに突っ込んだり無理な戦闘をしたりしないって、約束してくれる?」「約束?それは命令…なんでしょうか?」「ううん!え−っとじゃあね、わたしからのお願いってことで!」「お願い…」「うん、お願い!レイナちゃんのつらそうな顔は見たくないし…わたしだけじゃないよ。もちろん神田も、リナリ−も…いっしょに戦うみんな、だよ!」ふんっと、どこか得意げに胸を張るコレットに、思案する様子を見せるレイナ。「神田さまも…コレットさまと同じ気持ちなんでしょうか」「うん、きっとね!無愛想だから分かりにくいけど…優しいところもあるから!神田には」「それは…」自分も知っている、と聴かせてくれようとしていたんだろう。すこしばかり頬を赤らめたレイナが可愛らしくて、コレットもまた笑みを浮かべる。


「 コレット−レイナ−!汽車の手配が出来たわよ!イノセンス回収出来たわけだし、帰りましょ!ホ−ムへ 」
「 ホ−ム… 」
「 だって!行こう、レイナちゃん! 」
「 あのあの、コレット、さまっ… 」
「 ん、なあに?レイナちゃん… 」
「 また、任務ごいっしょ出来ると良い、です、ね… 」


恥ずかしいのか、だんだんと赤らんでいくレイナの表情をうかがって、コレットは振り向きざま、ふわりと笑みを浮かべた。「うんっ!きっとまた会えるよ!」そう言って、レイナの手を引いて走り出す。そしてコレットの言った”また会える日”は、きっと ――――― そんなに遠くない。コレットはなんとなく、そんな気がしていた。


傍らに花笑み
( snow drop なっちゃんへ!四周年おめでとうな気持ちをこめて! )