「リ−バ−さん!例のもの届いてます?」「わっなんだ天使様か…吃驚したなあ。ああ、届いてるよ」眠そうな顔を隠そうともせずに、リ−バ−班長はそう言ってくいっとデスクの向こうを指さした。それを確かめたコレットは満面の笑みを浮かべて「ありがとうございますリ−バ−班長!フィリスはまだですよね?」「ああ、今晩には戻れたら良いなあとは話してたけど」「分かりました。じゃあいまのうちに準備をしなくちゃ」「まあがんばれ」リ−バ−とのやりとりも手短に、たくさんの花束を丁寧に丁寧にある場所へ運んだ。


「 あれっコレット、なにしてるんですか? 」
「 へ?その声は…アレンくん?ごめんね、みっ見えないけどっ…フィリスが帰って来るまでに準備しなくちゃ 」
「 ああ…きょうはフィリスの誕生日でしたね。もしかしてコレットがすこし前に言ってたサプライズって…? 」
「 そうだよ−。実はまだ科学班に沢山あるの!アレンくんヒマだったら部屋に運ぶの手伝ってくれない? 」
「 それは構いませんが…良いんですか?他人が手伝っても… 」
「 大丈夫だよ!わたしがお願いしてるんだもん。それじゃあがんばろうアレンくん! 」
「 ぼくもがんばるの、確定なんですか…良いんですけどね… 」


僕もフィリスの喜ぶ顔見たいですし ―――― アレンのそんなかすかなつぶやきを背中越しに聞きながら、コレットはくすくすと笑みを浮かべた。「そう言えば運んでて思ったんですけど」「ん?なに?」「珍しい色のお花が多いですね、どうしてですか?」「黄色とかオレンジとかでも良かったんだけど、それじゃあもしフィリスが戻って来た時分かんないかなあって思ったんだけどね」「ああ、フィリスお花みたいですもんね」アレンの言葉に、うんうんと頷くコレット。だからお花に紛れても大丈夫なように白や珍しい色の花なんだなと改めて納得してみる。「ぼくも、フィリスの反応を見てみたくなりました」「でしょ?だから最後まで付き合ってくれる?」「もちろんです。まあ、ただしくは任務が入るまで、ですけどね」アレンの言葉に、コレットは分かってるよ−と笑って頷いた。


「 どうぞ、ジェリ−さんに頼んでおいた晩ご飯です 」
「 わあっ…ありがとうアレンくん! …ってやっぱり量多いね− 」
「 …もうその台詞には聞きあきてしまいましたよ 」
「 あははっ、それはそうかも。ねね、フィリスまだって? 」
「 ああ、さっきコムイさんに聞いたらすこし前にイノセンスを回収したからって連絡があったそうですよ 」
「 じゃあもうすぐだね!楽しみ− 」
「 リーバーさんに帰って来たらゴーレムで連絡くれるように頼んでおきました 」
「 おおっアレンくん準備が良いね!実は結構楽しみなんでしょ 」


嬉しそうに話すコレットに「はは、まあ多少は」と苦笑いを浮かべて頷くアレン。時刻は午後10時をすぎたころで、アレンとコレットはいまかいまかとフィリスの帰りを待っているとアレンのすこし遠目に、見覚えのある桃色の髪が揺れてみえた。ほとんど同時刻に、ゴ−レムからフィリス帰還の連絡が入った(すこし遅かったみたいだね−)。「コレット!フィリス帰って来ましたよ」「えっ!ほんとだ…寝ちゃうところだったよ」「発案者がそんなんで良いんですか…」ため息交じりにそう呟くアレンに、ごめんごめんと謝るコレット。「行くよ?準備は良い?」「ええ、ばっちりです」フィリスが部屋に入ったのを確かに見届けて、アレンとフィリスは両手いっぱいに花束を持ち、フィリスの部屋に駆け込んだ。


「「 フィリス!おっかえりなさ〜いっ 」」
「 えっ!?わあっコレットさんにアレンさん!こ、これはいったい… 」
「 えへへ−お誕生日おめでとう! 」
「 フィリスが帰って来るのを、待ってたんですよ。きょうはフィリスの誕生日だからって 」
「 アレンさん…コレットさん…ありがとうございます…! 」
「 え…ええっ!?な、泣くの!?泣くところなの!? 」


突然顔をうずめてしまったフィリスに、ただ慌てるばかりのコレット。そんな様子をただ微笑ましく見守っているアレンを振り返ったコレットはああそうか、フィリスは嬉しくて泣いているんだと気付いた。「ご、ごめんね?そんなに驚くなんて思ってもみなくって」「すみませ…コレット、さ」「え?」「ありがとうございます…」やっと顔をあげてほほ笑んだフィリスに、コレットはほっと胸を撫で下ろした。「それじゃあぼく、部屋に戻りますね。フィリスの反応もみられたことですし」「そっか…きょうはありがとうアレンくん!またあしたね!」コレットがそう言って力いっぱい手を振りながらアレンの背中を見送ると、くるりとフィリスを振り返って「驚かせてごめんねフィリス。まさか泣くほどまでとは思ってもみなかったから…」と言って彼女の顔を覗き込むようにしてみつめる。


「 上から目線なんて…反則ですよ… 」
「 ん?フィリス、なにかいった? 」
「 コレットさんの所為です。きょうはもう、お部屋には帰しませんからね 」
「 ええっ!フィ…フィリス?それ本気!? 」
「 当り前です。わたしを驚かせたお仕置きですよ 」
「 ええええ!フィリス怖いっ笑顔が怖いっ 」


「なんのことですか?コレットさん」表情は確かに笑っているのに、違和感のある威圧感を感じるのは決して気の所為ではないだろう。「なんでも…ありません…」これはもうあきらめるしかないと思ったコレットが両手を広げて降参のポ−ズをみせると、フィリスの部屋からは彼女の朗らかな笑い声が満ちふれた。



満 ち る 花
( フィリスちゃんお誕生日おめでとう−! )
お題提供